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自分が躓くようにして転んだその足首に、はっきりと誰かに掴まれている感覚があったのだ。
こうして倒れている今も、間違いなくその感触がある。
いったい何者が自分の足を掴んでいるのか、それを確認する勇気もなくただジッと恐怖で身を硬くする優子の側へ、彼氏が追いついてきた。
「大丈夫か? いきなり走ったりするから転ぶんだよ。あぁ、蔓に足を引っかけたのか。怪我してないか?」
「え? 蔓……?」
彼氏に身体を支えられ、ようやく動くことができるようになると、優子は自分の足を見ながら告げる彼氏の言葉に驚き、咄嗟に手の感触を伝えてくる足首へと顔を向けた。
――嘘、どうして……。
そこには、彼氏の言うように地面から伸びた蔓が引っかかっているだけで、人の手などはどこにも見当たらなかった。
同時に、確かに感じていた足首を掴む感覚も、まるで錯覚だったのではと思いそうになるくらい一気に薄れてなくなっていった。
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