鬼の手

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「子供の俺でも一人で行けたんだ。何も問題ないよ」 不安そうな声を出す優子を面白がるように笑って、彼氏は優子の方へ寝返りをうった。 「せっかく来たんだし、こっちにいる間は色々見て回ろう。優子にも俺の故郷のこと理解してほしいし」 「……うん。危なくないんだったら別に良いけど」 薄気味悪そうだなとは思っても、意地になってまで嫌がる理由がないため、優子はそのまま会話の流れに身を任せるように彼氏の申し出を承諾した。 そうして翌日。 前日に引き続き、からりとした晴天に恵まれた田舎の山道を、優子は彼氏と共に歩いていた。 車を使わないのかと訊ねたが、運動にもなるしハイキングがてら歩きながら行こうと提案され、それに従うかたちとなってしまったのだ。 蝉しぐれと時折鳥の鳴き声だけが聞こえ、道路には擦れ違う車の姿もなく、都会育ちの優子にとっては体感することの一つ一つがすごく新鮮なものに感じた。
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