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「こっちに」
そのままニ十分も歩くと、突然彼氏が優子の肩を叩き小さな脇道を指差した。
「赤い池に行くには、ここを通るんだ。この辺は地元の人以外ほとんど通ることがないし、仮によその人が来てもこんな所気づかないと思う。まぁ、気づいたってわざわざ入ろうともしないだろうけどね」
その脇道は、群生した下草と垂れ下がる木々の枝に隠されるようにして存在し、彼氏の言うように、確かに地元の人以外がここに気がつくのは難しいだろうと優子にもすぐ理解ができた。
何と言うのか、まるでその入口を境にして現実と非現実に分かれていてもおかしくないような、そんな不気味さが漂っているようにも感じる。
彼氏の先導で脇道へと入り、優子はそのまま鬱蒼と生える木々に包まれた薄暗い細道を進んでいくも、どういうわけかその道に入った途端、先程までの暑さがなくなりひんやりと冷えた空気が肌にまとわりついてきた。
湿度もありそうな場所なのに、蒸すような感覚もない。
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