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不思議な所だなと思いつつも、優子は先を行く彼氏に遅れまいと必死に奥へと進んでいった。
そうして、十分ほども歩いた頃。
「――見えた。ほら、あそこが池だよ」
彼氏は突然立ち止まると、前方を指差しながら優子の方を振り向いてきた。
「…………」
その指先に導かれるようにして、優子も視線を前に向けると、確かに木々の隙間から濁った赤い水が姿を覗かせているのがわかった。
「な? 赤いだろ? もう少し近くまで行ってみよう」
まるで、動物の血でも混ぜて作ったような、見た者全てが本能的に拒否反応を起こしそうになるその池を見て、優子は咄嗟に“行きたくない”と思った。
理由はわからないが、近づいてはいけない。
そう身体が訴えかけているように、足が動かなくなってしまったのだ。
「恐がらなくて平気だって。何もいないから」
しかし、そんな優子を宥めるように優しい声をかけ、彼氏は優子の腕を掴んで歩き始めてしまう。
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