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小さな子供が手を引かれるようなかたちで赤い池の側へと移動させられた優子は、そこに見える光景を
まるで血の池地獄ようだ。
と連想した。
幼い頃、何かの本で見たことのある、鬼が悪人を真っ赤な池の中へ落とす絵柄がフラッシュバックし、両腕に鳥肌が立つのを自覚した。
「な? 特に何もないだろ? 子供の頃はもう少し不思議に思って見てた記憶があるけど、やっぱり慣れかな。今になって見ても懐かしいくらいしか思わないや」
隣で話す彼氏の明るい声が、何だかすごく場違いなものに感じて、意味もわからず不安が大きくなる。
「…………ねぇ、ここはもう充分だから、そろそろ戻ろ? どこか他の場所を案内して」
自分でもよくわからない焦燥感が限界まで膨らみ、優子は彼氏の腕へ強くすがり付きながら訴えるように顔を見上げた。
「何だ、優子って結構恐がりだったんだな。初めて知った」
しかし、優子の気持ちを察することもせず、彼氏はお気楽ににやけ顔を浮かべた。
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