洗濯タグが変わったワケ

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 買い物帰り、友達の美奈とカフェに寄った。  大通りの見える窓際のテーブル席だ。 「あー足疲れた」 「甘い物って癒されるよね」  フラペチーノをすする彼女の隣には、紙袋が三つも並んでいる。  私はといえば靴下しか買わなかった。 なんとなく気に入る物がなかったし、服だって五年前のものでも気にせず着られるタイプだ。 「……そういえば美奈ってさ、服買うとき真っ先に裏側確認してるよね」  ふと先ほどのことを思い出した。縫製でも見ていたのだろうか。 「あー……タグ見てるんだ」 「え? 首元にあるでしょ?」 「そっちじゃなくて、洗濯の方法とか品番とかが書いてある方の大きいやつ。左側にあるでしょ」  なるほど洗濯方法が気になっていたのか、と私は納得した。 「確かに、ドライクリーニングオンリーだったら面倒くさいもんね」 「それもあるんだけどさ」  美奈はなぜか辺りを見回した。店内にはさほど客がいない。 そのおかげかは分からないが、彼女は身を乗り出して話し始めた。 「……私、古いタグが嫌いなんだよね。洗濯表示が旧バージョンのやつ」 「え? 何それ」 「知らない? この洗濯表示マークって、平成二十八年から新しくなったんだよ」  美奈がスマホで何かを調べ始めた。 「ほら、これ」  画面を私に向ける。 表示されていたのは洗濯表示マークの一覧表だ。 その服をどう扱えばいいのかが、アイコンのような分かりやすいイラストで描かれている。
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