13人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「左の列が古いマークで、右の列が新しいマークなんだね」
古いものはマークの中に日本語が書かれているものもあり、分かりやすい。
一方、新しいマークはまるで何かの暗号のようだ。
「古い方が分かりやすくない? なんでわざわざチェックするくらい嫌いなの?」
「んー、ちょっとイヤな話を聞いちゃってさ」
「何? どんなの?」
「どこから話せばいいのかな」
美奈はズルズルとフラペチーノを飲んだあと、真面目な顔でこう訊いてきた。
「……地図に存在しない村、って聞いたことある?」
「ない。それ本当の話?」
「なんか、いろんな事情で地図には載ってないけど存在する村ってのがいくつかあるらしいのよ」
「廃村とかじゃなくて?」
「そういうパターンもあるよ、杉沢村とかね。自殺未遂した人が集まってできた樹海村なんてのもある。だけど私が話したい村は、そういうのじゃなくて」
「なんて村?」
「名前はないみたい。でもこの話を教えてくれた人は『存在してはいけない村』って言ってた」
よく分からない。
どのようにしてできた村なのだろう。
「限界集落とかでもなくて?」
「ううん、逆。その村は子供ばっかりなの」
「えっ?」
「大人になると消えちゃうの。その前に消えちゃう子もたくさんいる」
「消えるって、死ぬってこと?」
「死ぬともいえるし、永遠に生きるとも……」
雲をつかむような話だ。さっぱり分からない。
美奈自身説明に困っているらしく、難しい顔で首を傾げ、口を結んだ。
そして、しばらくしたのちにこう切り出す。
「……『居所不明児童』って知ってる?」
「キョショ? 何?」
今度は私が首をひねる番だった。
すると、彼女は淡々と説明してくれた。
『居所不明児童』とは存在の確認できない子供のことだ。
住民票はあるのに、その子がどこにいるのか自治体は分かっていない。
そういう子供が日本には意外とたくさんいる。
最初のコメントを投稿しよう!