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歌が聞こえる。
新しい朝が来た希望の朝だと。
ラジオ体操である。
布団に包まっていた所為で身体は本調子では無いが、僕は生きている。
当たり前だ。
僕に月子さんの話をした天野は友達では無いのだから、友達では無い人に聞いたところで害は無い。
僕には友達なんか居ないのだから。
そんな自分に似た僕の命を奪うわけが無い。
「おはよう」
榊チセに声をかける。
見ている事しか出来なかった筈なのに、何故だろう。
話がしたいと思った。
話さなければと思った。
話さなければ命は無いと思った。
「僕と友達になって欲しいんだ。ううん。違うな。大好きです。僕と付き合って下さい。ダメかな」
そんな事を言うつもりは無かった。
好きだったけれど、言える訳が無いと思っていた。
何故か、すんなりと言葉が出た。
まるで、魔法にでもかかったように、
誰かに操られているかのように、
僕の手は榊チセに伸びる。
榊チセはフフっと笑う。
「本当に願いが叶っちゃった」
「え、何の事」
僕は首を傾げる。
「リサちゃんがキミと仲良くするんだもん。仕方ないよね」
僕と榊チセは手を繋いだ。
夏休みが終わり、神木リサが転校したと聞いた。
僕のスマートフォンには、白い服を着て白眼をむく彼女が恨めしそうにコチラを睨む写真が残っている。
その姿は八不思議の一つ、月城月子と同じ真っ白な服だった。
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