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黒いランドセルを背負い、家へ向かう。
明日からは夏休みである。
一度プールの当番で学校に来なければならないのが、嫌だが、僕は神木の仕切るグループと同じ日なので我慢できる。
榊チセと一緒ならば、プール掃除もキラキラして見える。
ならば、ラジオ体操は行った方が良いのだろうか。
考えながら歩く僕を呼び止めたのは同じクラスの天野だった。
「なあ、お前月城月子さんって知ってる」
校長は、この噂話をするなと全校集会で言ったが、止めたことにより真実味が出てしまい今日何度もこの噂を聞かされている。
知らないのは榊チセ位なのでは無いか。
それすらも、何処かで聞こえていそうだ。
校長の策略は大失敗したのである。
「さあ、誰だソイツ。そんな奴は知らない」
天野は、大きな声で可哀想にぃとニヤニヤした顔で僕を指さし笑う。
「なんだ天野君。笑い過ぎで訳分からないよ」
「なんでって、お前」
ひっひひっひと笑うクラスメイト。
周りを歩く視線が集まる。
「月城月子さんの事を馬鹿にしただろう」
馬鹿にしただろうか。
そんな奴知らないと言っただけだが、他人が言うならそうなのだろうか。
「月子さんを馬鹿にした奴には次の満月の夜。必ず来るぞ」
満月の夜。
明日。
「じゃあ、お大事にー」
ぎゃはははと笑いながら天野は走って行った。
必ず来る。
月子さんが来てしまう。
「大丈夫か転校生」
彼女は僕を転校生と呼ぶ。
転校してから一か月も立つのだから、名前で呼んでくれればいいのに。
「神木さん」
「天野にやられたな。月子さん聞いちゃったよな」
隣の席にいつもいるが、こうして並んで歩くのは初めてか、身長が高い。チセと一緒に居るから大きく見えていたが、僕よりも大きい。ランドセルが無ければ高校生くらいに見えなる様な大人っぽい人だ。
「うん。明日僕の所に来るらしい。月子さんが来たら、僕は死んじゃうよな」
「どうせ来るなら、私が知っている月子さんについて教えるよ。何か役に立つかもしれない」
ニコリと笑う彼女は無理しているのが分かる。
僕は明日月子さんに襲われる。
もう学校にも行けないのだろう。
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