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「最低だな。じゃあ美味しいものを食べても味がしないのか、でも生きていられるんだね」
「生きていられるかしら。五感って大事だと思う。それに、その次は夢に現れます。悪夢しか見られなくなるんだって、魂を夢に閉じ込めちゃって出られないの。ずっと怖い夢から出られなくなる」
怖い夢。
時々見るが、夢から出られないのか。
「お祓いに行っても無駄なのは、子供にしか見えないからだそうよ。見えないモノは祓えない。大人は頼れないの」
「じゃあ、僕はどうなるんだ」
神木リサは、うーんと黙る。
遠くでは、家族で楽しそうに花火をする姿が見える。
その中に、チセの姿が見えた気がしてしまう辺り、恋である。
初恋である。
話したことも無いし、話すことが出来ないまま僕は月城月子に消されるのか。
「夢から出られなくなって、死ぬ。そして次の月城月子になって誰かを襲うのでしょうね」
でしょうねって。
助けてくれよ。
「そう言えば、転校生よくこの時間に家抜け出せたね」
「ええ、そんなのどうでもいいから助けてよ。うち共働きだからさ、十一時ころまでいつも一人なんだ」
だから、大人に見えない幽霊だろうが、襲われる時、誰も助けてはくれない。叫んでも誰も来ないのだ。
「ふーん。私も同じようなものね。助かる方法もあるのよ」
「教えて」
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