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両親は仕事が忙しく、帰って来ていない。
真っ暗な家の電気をつける。テレビをつけて、音を出す。何かを食べようとは思えなかった。
もし、味がしなくなっていたら、月子さんは既にココにいるのだと証明されてしまうからだ。
スマートフォンが光る。
神木リサの連絡先の入ったスマートフォンを手に取る。
「うわああぁ」
思わず投げてしまったソレを恐る恐る拾い。もう一度、画面を見た。
ディスプレイ画面に映る白い服を着た髪の長い女。
女の眼は白眼をむいていた。
背中に汗が流れる感覚が気持ちわるく冷たい。
喉が音を立てるのが分かる。
とんとん、とんとんとんとん、とんとんとんとんとんとん。
どんどんどんどんどんどんどんどん大きな音。
玄関。
「お母さんだ。帰ってきた」
扉を開こうとして、手が動かなくなる。
「おかあ、さん」
どんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどん。
バン、バンバン、バンバンバンバン、バンバンバンバン音が変わる。
違う。
誰だ。
月子さんか。
本当に来たのか。
「うわああああ」
布団に包まる。
扉を叩く音はまだ聞こえている。
そして、女の声が聞こえる気がした。
歌が聞こえる。
あの歌だ。
あの声。
公園で聴いた歌と全く同じ声だ。
「アナタの命と私の命、
交換しましょう。
今すぐに。
分けて下さいその命。
サヨウナラ」
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