春の日を待ち侘びて

9/9
前へ
/9ページ
次へ
 止まれ。止まれ──。  私は手の甲を、必死にまぶたに押し付けた。  こんな顔じゃダメだ。  もうすぐ陽にーちゃんが来る。  そしたら、言わなきゃいけない。  ふわっとした風が、プランターの花を揺らしている。  だけど、ぼやけてよく見えない。  私は天を仰いで、待ち続けた時間に別れを告げた。 『卒業おめでとう』 【end】
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加