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卒業式に出席できるのは卒業生とその父兄、先生方、在校生の代表一部と吹奏楽部だけで、私はそのどれでもない。
それでも今日この日、私は陽にーちゃんに想いを伝えに来なくてはならなかった。
私は小さい頃からずっと、陽にーちゃんのそばにいた。
桜の季節も。
スイカの季節も。
スズムシの季節も。
サンタの季節も。
私はずっと、陽にーちゃんの横顔を見上げてきた。
小さい頃はマニュアルのように「まるで仲の良いきょうだいみたいね」なんて言われて有頂天になって、でも歳を重ねるにつれてそれじゃなんだか物足りない気がして。
それが初恋だということを知って。
そんなことを意識し始めると、なんだか陽にーちゃんのそばにいることが気恥ずかしいやら息苦しいやら。
ちょっと距離を置いてみたりして、それを数年後「なんてもったいないことを!」と嘆いてみたり。
そんな毎日は、私にとって掛け替えのないものとなって積み重なった。
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