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陽にーちゃんには今、彼女がいる。
朝霧香澄。17歳。
私の親友。
香澄がいつどのようなきっかけで陽にーちゃんのことを好きになったのかは、知らない。
全て終わってしまえば、確かにやたらと私に陽にーちゃんの話を聞いてきたと思うが、本当に後の祭りだ。
香澄は陽にーちゃんの受験が終わるのを待って、正々堂々と告白し、陽にーちゃんの横顔を見上げる権利を手に入れた。
幼馴染みという立場に甘んじていた、私と違って。
暖かい風が、慰めるように私の髪と頬を撫でる。
慰めなんていらない。
慰めてもらえる立場なんかじゃない。
私は散々、陽にーちゃんの優しさに甘えてきた。
きっと自分の気持ちや親友との関係や陽にーちゃんの都合を全部無視すれば、これからも居心地のよい風に吹かれていられるだろう。
でもそれじゃダメなんだ。
私は、だから今日ここに来た。
陽にーちゃんに想いを伝えて、フラれるために。
耳聡いちーこは、私の告白する相手が“私の親友の彼氏になったばかりの人”だということをもちろん知っている。
キラキラとした彼女の瞳に映る私は、どれだけ滑稽な存在だろう。
私にはそれくらいの傷が、必要なのだ。
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