春の日を待ち侘びて

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 卒業生の声が聞こえてきた。  どうやら卒業式も、佳境に入ったようだ。  私の脳裏には、一歩ごとに思い出が溢れ出す。  酔っ払ったお父さんにふたりで眉をひそめたお花見。  縁側で並んでスイカの種を飛ばして、陽にーちゃんは自分の飛ばした種が蝉に当たったって言い張った夏の日。  お母さんと喧嘩して、家を飛び出した心細い夜。  ひとりぼっちの私に「ここだと思った」って温かいミルクティーを差し出してくれたのはやっぱり陽にーちゃんで、私はあの日の虫たちの音楽会は今でも耳に思い出せる。  チキンとケーキの後にくれたブカブカの手袋はすっかりきつくなって、今では机の横で誰も乗らないブランコみたいに、たまに揺れている。  頭の中で反復する思い出。言葉たち。  全てが過去のものになる。
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