警笛鳴らせ

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「それで『警笛鳴らせ』とどう関係あるの?」  話し終えた沢崎君に訊くも、すぐには返事がなかった。 「あー分かった。お婆さんの霊に憑かれないようにクラクションで祓うんだ」  遠く見据える先に白い何かが立っている。 標識だろうか、雨でよく見えない。 「……逆かなあ」  ガコン、と軽く車体が揺れる。 石のような、小さくて硬い何かを踏んだようだ。 「逆って何よ。まさか霊を呼び込むとか?」 「この道はもうお婆さんの領域なんだ。あのあと事故が頻発してね、その筋の人に見て貰ったら、ほかの霊まで引き寄せてひどいことになってるって」 「何それ……この道の話なんだよね?」  焦って周囲を見渡す。 奇妙にも、彼は軽い笑い声を立てた。 「だからクラクションなんかで祓えないんだよ。みんな一緒。ここに来たら誰だって『乗せる』もんなんだ」  私は信じられない思いで彼の横顔を見る。  それならなぜ、この道を通るのか。  柔和な笑みがひどく不気味に感じる。
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