ポケットティッシュの中の闇

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 次に、グーグルマップの指し示した『×県×市』と『エミちゃんの秘密』で調べた。 引っかからない。 検索ワードを少しずつ変えて試行錯誤する。  そして『×県×市』『えみ』『首吊り』で検索したときだった。 「これだ……!」  ×県で起きた一家三人の無理心中。 女児二人が母親に殺され、母親自身も娘たちの隣で首を吊った。 その姉妹の姉の名前が「井淵(いぶち)恵実(えみ)」なのだ。 つまりエミちゃんとは、井淵恵実のことではないか。  詳細を読み進める。  ーー三年前、×県×市の住宅街から通報があった。 「妻と子供が自殺した」という、井淵猛志(いぶちたけし)(当時三十九歳)からの通報だった。 彼は夜十時ごろに仕事から帰宅し、家族を起こさないようにリビングのこたつで寝たという。 しかし朝になっても誰も起きてこなかったので、不思議に思い二階の寝室へと向かった。 そこで、鴨居からぶら下がった妻子三人を発見したのだ。 床には妻の携帯電話が置かれており、育児に疲れた旨の遺書らしき文章が書かれていた……。  スマホを持つ指先が、しびれるほどに冷たい。  パソコンが映した光景は、三年前に井淵猛志が実際に見た光景だったのだ。 一番心穏やかでいられるはずの我が家で起こった、突然の悲劇。 愛する妻は娘を吊るし、自らも命を絶った。 夫だけを遺して。  先ほどまで感じていた恐怖が悲しみに代わっていく。  おそらく娘二人は寝ている間にわけも分からぬまま殺されたのだろう。 井淵恵実は何が起こったのか知ることもできずにこの世を去った。 「だから、友達を作ろうとした……?」  死んだことにすら気付かずにそんな行動をとっているのだろうか。 書かれていたのはラインのIDではなかったけれど。  しかし、何かがおかしい。
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