ポケットティッシュの中の闇

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 思い出したのは、二日後の夜だ。  その日は特に寒く、自室で鼻をかもうとティッシュボックスに指を突っ込んだ。 しかし一枚も残っていない。 「あ、そういえば」  ベッドわきに放置されていた二日前のデニムパンツのポケットを探る。 二つともあった。 洗濯する前に思い出せてよかったと安心しつつ、ヒデの話を思い出す。 「……あれ、ガセだよな」  広告効果を上げるための仕込みならば、まず当たりがあることを宣伝しなければ意味がない。  そう思いながらも、俺は二つのポケットティッシュから広告紙を抜き取った。 なんの変哲もないカードローンのチラシだ。 二枚とも裏を確認する。 「書いてあるわけねえか」  そのままパソコンデスクの脇にあるゴミ箱へと持っていく。 放り入れる直前、もう一度だけ顔を近づけた。 指の下に薄いインクで何かが印字されている。 「……ん?」  親指をどけてまじまじと見る。 右端の下に、かすれたインクでこう書かれていた。 『34.941149, XXX.119444』  製造番号か何かだろうか。 まさか、これが噂の『エミちゃんの秘密』ではないだろう。 文章になっていないどころか日本語ですらない。  パソコンを立ち上げ、この数字を検索してみる。 ヒットしない。 何かのURLだろうかと考え、通信プロトコルをつけ体裁を整えてアドレスバーに打ち込む。 なんのページも引っかからなかった。  ガセに踊らされたのか。  しかしその後もなんとなく気になっていた。 ティッシュを使うたびにヒデの噂話が脳裏をよぎる。 そして数日後、パソコンで調べ物をしている最中に、ふと閃いた。
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