ポケットティッシュの中の闇

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「もしかして……座標か?」  グーグルマップのページへと飛ぶ。 左上の検索バーにあの数字を打ち込み、半信半疑でエンターキーを押した。 「……出た!」  これは位置情報だったのだ。 ×県×市の地図が、右画面に表示される。 細い道が血管のようにぐねぐねと伸びていた。  次に右下にある人型のアイコンにポインタを合わせた。 ドラッグし、先ほど座標が示した場所へと落とす。 こうしてストリートビューを使うことで、あたかもその場所を歩いているかのような風景を連続的に見て回ることができるのだ。  吸い込まれるように映像が流れる。  現れたのはどこにでもありそうな田舎町だ。 中央に白線のない道路の両脇に、建物がまばらに並んでいる。 ぐるりと辺りを見回すと、ほとんどが平屋建ての民家だった。 材木が山と積まれた広い一角もある。 △△木材店と書かれた建物が、そのわきに建っていた。 どこも壁の色は退色し、ペンキは剥がれ、相応の年月が流れたことを感じさせる。 しかし車が走っていたり、自動販売機があったりと、人の気配も確かに感じられた。  その中で一か所、不気味な家がある。  赤錆のような色をした屋根の二階建てだ。 壁は木材で作られているようだが、妙に黒い。 煤けたような黒ではなく、そこだけ画質に異常が出たようなべったりとした黒なのだ。 細かく視点を調整するたび、壁面の黒が波打つようにみえる。 窓ガラスもきっちりとはまっているし、どこか壊れているわけでもないから、廃屋ではないのだろうけれど。  何気なく、黒いドアにポインタを合わせる。 すると矢印型の大きな円が現れた。 「えっ?」  俺は困惑しつつもクリックした。 画面が移動し、薄暗い玄関が表示される。 「……嘘だろ」  信じられない。
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