ポケットティッシュの中の闇

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 様々なショップが対応しているのは知っていた。 ストリートビューで街歩きを体験しつつ、気になった店にはクリック一つで入店できるのだ。 実際に訪れなくても雰囲気が分かるし、飲食店だとメニューが確認できるのもありがたい。 しかし実際は対応していない店舗も多かった。 ましてや、民家に入れる仕様など聞いたこともない。 ーー「女の部屋の中とか見られるようになるらしいぞ」。  ヒデが言っていたのを思い出す。 つまりこれが『エミちゃんの秘密』というわけか。 とすれば、やはりこれは大掛かりなプロモーションの一環だろう。 何のかは分からないが。  玄関からまっすぐに伸びる、薄暗い廊下をクリックする。  一気に廊下の中ほどにまで移動した。 左右にはドアがあり、突き当たりはリビングらしき部屋へと続いている。 左右のドアを試したが開かなかった。 奥へと進み、リビングの入り口に立つ。 左手には二階へと続く階段があった。 生活感はあるものの、どこもかしこも薄暗くて気味が悪い。  リビングに足を踏み入れた。  中央に座卓があり、コップやリモコンや郵便物が置かれていた。 その奥は台所だ。 汚れた食器がシンクにあふれている。 床には衣服や本やカバン類が散乱し、座布団が大きくずれて置かれていた。  こんなにも生活感はあるのに、住人だけがいない。 抜け殻のような生気のない部屋に不穏なものを感じた。 そっとウィンドウを閉じた方が良いのではないかという気さえしてくる。  あとは二階を見るだけだ、と自身に言い聞かせた。 そうしなければまたヒデに笑われるような気がしたからだ。 つまらない意地と好奇心に負け、廊下に戻ったのち階段をクリックする。
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