ポケットティッシュの中の闇

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ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ  突然モニターが真っ青になった。 目まぐるしく英文が表示されていく。 大音量のビープ音が、悲鳴のように響いた。 「な、な、なっ……!」  瞬く間に白い英文が画面を埋め尽くした。 狂ったように文字を吐ききったのち、唐突に真っ黒になる。 プンと小さな音を立てて、それきりパソコンは沈黙した。  心臓が弾けんばかりに脈打っている。  パソコンは壊れてしまったかもしれないと思ったが、確認する気にはならなかった。 触れたくない。 それ自体がひどくおぞましいものに思えた。  大体、おかしいところが多すぎる。 あの少女は本当に死んでいたのか。 どこからどう見ても本物の死体にしか見えなかった。 それなのに、俺が間違えてズームアップしたとき、少女の顔のすぐそばに左手が映り込んでいた。 直前に見た全体図では、せいぜい腰のあたりまでしか手を持ち上げていなかったのに。 「い、イタズラか……?」  CGか特殊メイクで作ったのだろうか。 そうであってほしいし、きっとそうなのだと思い込もうとした。 けれどできない。 それほどあの映像は生々しく、不可解だった。  パソコンのそばにはいたくないので、席を立つ。 部屋の反対側にあるベッドに腰を下ろした。 もう夜遅くはあるが、到底寝られそうにない。  居ても立ってもいられなくなり、スマートフォンを取り出す。 『エミちゃんの秘密』と打ち込んで検索した。 有名な都市伝説らしく多数ヒットする。 どの記事もここ最近、一、二年内に書かれたものだ。 噂の大筋はヒデから聞いていた通りなのだが、詳細は各サイトによってバラバラだった。  ーーポケットティッシュに書かれているのは、異世界に行くための呪文だという説。  ーー自殺したエミちゃんの作ったサイトのアドレスが書かれていて、アクセスすると呪われるという説。  ーー友達を作るため、エミちゃんの霊が広告の裏にラインIDを書いて登録してくれる人を待っているという説。  どれも今一つピンと来ない。
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