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──そこまでの高さじゃなくても。
身体が後ろ向きのまま、ひっくり返って。
私は頭から床に──落ちる。
──これ、ゼッタイに痛いヤツ……!!
認識は出来ても、対処は出来ない。
私はギュッと目を強く瞑った。
「──あぶない!! 」
────え……?
声が、聞こえて。
風を感じたと思ったら、なんだかふっと甘い匂いに包まれた──気がした。
「間に合った…… 」
柔らかなハスキーボイスの後に続けて、はぁーっと脱力したような息づかいが聞こえてくる。
しっかりとした大きな手の感触と、あたたかな体温のぬくもり。
そしてかすかに、心地よく思えてしまう甘ったるい匂い。
「なんとか、とどきました……大丈夫ですか? 」
とどいた、というその手の力がほんの少しだけ解かれた。
大丈夫かと聞かれて、ようやく気付く。
私はどうやら、頭を打たずにすんだ……
『誰か』が私を抱きとめて、助けてくれたから。
「大丈夫……です…………」
頭から落下は回避したけど。
さっきの視界真っ白状態も、何故かもう無くなっているっぽいけど。
脳内の警告音は、未だ消えてくれていない。
目を開けた先にいたのは
ビッッックリするほど、整いが過ぎちゃってる男子。
サラサラの黒髪を、こなれた感じに無造作させてる長めのショート。
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