電信柱

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近所に奇妙な男がいると友人から聞いて黄昏時のコンビニ帰りに遠回りをしてうわさの現場をのぞいてみた。食品工場などが立ち並ぶ工場群の一角に一人の男がいた。 「11、12、足りない」 男はなにやらブツブツとつぶやきながら目の前で踵を返すとまたフラフラ今来た道を戻っていった。あきらかにおかしい人だと思い、さっさと立ち去るべきだと考えその場を後にした。 夕食の後、テレビを観ながらもあの男のことが気になって仕方なかった。コンビニで買ってきた漫画雑誌も読む気になれなかった。 「今、大丈夫か」 迷いあぐねてうわさ元の友人に電話をかけた。 「今、ちょうど風呂からあがったとこ、どしたの」 「実は」 今日うわさの男を見に行ったこと、男の様子があきらかにおかしかったことを友人に話した。 「足りないって言ってた。なにが足りないんだろう」 「電信柱の数じゃないかな」 友人の予想外の答えに驚いた。 「食品工場でバイトしてる奴に聞いたんだが、ずっとその周辺の電信柱を数えているらしい。理由はわからんがな」 電話を終えた後、珍しく考え込んだ。明日また同じ時間帯に行くことに決めた。
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