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空飛ぶミーミーマウス
「悪い悪い、電車が遅れてさ」
「電車が遅れたのはいいけど、連絡ぐらいしてよ」
和美は仁斗志に言った。
仁斗志は和美の鞄を持った。
和美はやっぱり怒っている。
きちんと理由を説明すれば理解してくれるだろう。
それにしても、何と言おう。
「電車で荷物が挟まった人がいたから遅れたんだよ」
「電車が遅れた理由なんて聞いていないわよ」
仁斗志は和美と並んで歩き出した。
和美は仁斗志に膝蹴りをする。
まずい、余計に怒らせてしまった。
ここは更に弁解するか、それとも……。
「痛て、その荷物が挟まった理由がさ……」
「荷物が挟まった理由も聞いていない! 」
空は青かった。
仁斗志は和美に近づいた。
もう弁解は無理だ。
言うなら今だ。
「よく聞いてよ。その荷物がさ。これなんだ」
仁斗志は後ろから花束を出した。
和美は口に手を当てた。
「え? 」
「本当は、和美への花を買っていたんだ」
和美の頬が赤くなる。
「どういうことなの? 」
仁斗志は和美に向き直った。
よし、言うぞ。
和美は下を向いた。
「和美、誕生日おめでとう!」
「仁斗志……ありがとう」
太陽が和美を照りつける。
仁斗志は和美の手を握った。
やったぁ!大成功。それにしても。
「ねぇ、ところで和美はどうして俺を待っててくれたの?」
「ん?私が仁斗志を待った理由?私が仁斗志を待った理由は、私の大好きなミーミーマウスが空を飛んだからよ」
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