闇とマント

1/1
前へ
/18ページ
次へ

闇とマント

闇に紛れて消えてしまいたい 夜色のマントを翻して どこかに姿を隠してしまったあの人のように あたしを残して行ってしまった 何度呼んでも立ち止まってはくれなかった 振り返りもしなければ 手を振ってもくれない 行って欲しくなくて 全力で追いかけた あたしがあの人の肩に手を触れた瞬間 光の無くなった空を足早に流れる雲も 強風に激しく揺れる木々も 何もかもそのままなのに あたしの時間だけが止められて あの人はマントを翻して行ってしまった あたしの見えないどこかに あたしじゃ行けないどこかに あたしも闇に紛れてあの人の元へ行けないかと 闇夜に出会うたびに祈ってしまう 出来ないことがわかっていても
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加