とんでもない美形

抵抗も虚しく、走り出してしまった車からは逃げ出す方法も思い付かない。これはもう目的地に着いたら隙を見て逃げるか？今、バレないように警察に…。そうだ、拘束はされていないし何も物は盗られていない。そしてそうっとポケットのスマホに手を伸ばしたところで、助手席に座っていた先程の男がまたもや丁寧な口調で語りかけてきた。
まるで見計らったかのようなタイミングだ。

「足立様、そうご心配なさらずとも我々は誓って、貴方に危害を加えるつもりは一切御座いません。お疲れでしょうから、どうぞ到着までお休みなさっていてください」

危害を加えるつもりは無いって、どういう…？確かに金目的とは思えないし、無理矢理車に乗せられた以外は何もされていない。通報するかもしれないのにスマホも鞄だって取り上げられていないし、本当に俺をどうこうするつもりはないのかも知れない…。しかしだからといって、こんな意味の分からないドッキリを仕掛けてくるような知り合いがいる心当たりも当然無い。

危害を加えられる可能性が低いにしても、絶対では無いし…。大体到着までゆっくりしてろって言われても、こんな状況で寝られる奴の気が知れない。
座らされたシートは確かに人一人寝転がれる程の広さはあるが…。こんな意味の分からない状況で、寝られる訳が無いだろうが！！