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と、書かれた紙を額から下げて正座した和装の男であった。
「え」
意味が分からなさ過ぎて、俺の口からは思わず間抜けな声が漏れ出る。そんな俺の背中を黒ずくめの男がそっと押して、半ば無理矢理部屋の中に押し込みやがった。
「それでは、ごゆっくりどうぞ」と男達は役目を終えたと言わんばかりに立ち去って行き、だだっ広い和室の中には、"とんでもない美形"野郎と状況を全く飲み込めずに固まったままの俺だけになってしまった。
変てこな和装男は座布団の上に正座して、何も言わず俺の方を見ている。多分だけど。紙のせいで顔は全く見えないので、彼の視線の先も表情も何も分からないのだ。
あの紙は何だ?和紙か?薄いのか?向こうから俺の顔は果たして見えているのだろうか。それにしても、無駄に達筆なのが何か腹立つな。
というか…え、何。何だこれ。
こういうの何かで見たことある気がするんだけど…何だっけ?ああ、あれかな、妖に紛れた人間かな?今から妖だらけの祭りにでも参加する気か?それならもふもふのたぬき…いや、猫の姿の先生が近くにいるはずだ、もふりたい。もふらせてくれ、じゃなければ今すぐ帰らせてくれ。友人帳に俺の名前は無い筈だ!
驚きと呆れで口が半開きのまま入り口に突っ立っている俺に、謎の和装男は自分の正面の座布団をすっと指差してそこに座るよう促した。俺が戸惑いながらも示された場所に座ると、男は徐に口を開く。見えないけど。
…俺からは何も見えないけどやっぱり向こうからは見えてんのかな。
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