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(何をコソコソとしている──)
「……見えてる……のか」
睨み付けてくる視線を、隆義は遠くから感じ取った。
(日向の元で腑抜けたか。──使えん奴め)
「……!」
吐き捨てるかのように届いた声。
「……たかよしのおとうちゃんにも、うちとおなじように、ゆうれいがそばにおる……」
「──そうか。──それで、こっちに気付いたんだ」
睨みに少し同様したのか、隆義の手は震えた。
が──
[聞こえる? 爆発とか気になるだろうけど、急ごう]
「……了解」
[半ホバー、コンバットペース。銃上げ前進──!]
ココの声で、震えを押さえつけて冷静に戻る。
遺体の場所まで、あと少し──
ココ、隆義共に、機体のホバーのスロットルを半分のまた半分、四分の一の出力に。
これで少し歩く速度が増し、駆け足ができるようになるのだ。
急ぎ足の為、構えている銃を上に上げ、脚を動かす操作を優先する。
「こっちの行動は、父さん──あっちの方に筒抜けになる、って事か──」
だが、隆義は父が自分と同じ力を使える事に、一種の気味の悪い感覚を覚えた。
その気になれば、父・長信はこちらの行動を「潰す」事など簡単にできるのだから。
「すくなくとも、そうなるようね。じゃけど、ぎゃくもできるけぇ」
「……俺の方も、あっち側の行動を読める?」
「うちがおるじゃろ」
「……オッケー。きゅーちゃん、あっち側が何してるか読み続けて」
「まかせんさい」
不安感に耐えつつ、隆義はきゅーちゃんに頼んだ。
[マツダの敷地はここまでみたい。大洲に出るよ]
「あぁ。目的地はもうすぐ──!」
目の前の路面に見える「止まれ」の文字と、社員寮の敷地を閉じる鋼のゲート。
ココと隆義が駆るブルーチームの二機は、それを大きくジャンプして飛び越えた。
一方、レッドチーム──。
[ドクターエイブルよりドリルサージェントへ。異常発生、西区でドンパチやってる連中がいるぞ──]
「あぁ、花火のような爆発音が聞こえた」
教官は、ドクターこと義辰から送られてきた映像に一瞬目をやり、目の前の状況に再び集中する。
彼は今、敵の目と耳の隙を突いて、川から柞木(ほうそぎ)に上陸した所なのだ。
「このまま仁保南に抜け、黄金山山頂を目指す。着いたら連絡する」
[あぁ。それと、レーダーが妙な識別信号をキャッチした。XAM-85、轟震の構造試験機だぜ]
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