18. 死者の慟哭

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「XAM-85だと!? "例の事件" で強奪された機体が、どうしてここに居る!」 [西区で暴れてる連中に混じっているようだぜ──。一応、動きには気をつけてくれ] 「──解った、とにかく行動を急ぐ。オーバー」  教官は通信を切り、再び周囲を確認した。  敵影は通り過ぎた。自身が乗るジャグリオンも光学迷彩で姿を消し、周囲の闇に溶け込んでいる。 「……嫌な予感がする」  西の方角から妙な威圧感を感じながら、教官は目の前の道を急ぎ始めた。  その姿をアンブレラドローンのカメラで見守りつつ、ジジイこと義辰もまた、各個のドローンに命令を下した。  一つにはドリルサージェントこと教官に周辺情報を提供する為。  もう一つには、出撃前の隆義の頼みにより、霞中学校を偵察する為である。  視点はブルーチームに戻る。  目標地点を臨む川の対岸に着いたココと隆義だったが──。 「……」  隆義は言葉を失っていた。  それに関しては、目の前にいるココも同じだろう。  杭と有刺鉄線で急造されたフェンスに、見せしめに括り付けられた多数の遺体。  ひどい状況なのは、写真からも解っていたのだが──。 [……実際に目にしたら、悲しくなってきたよ……]  ココは画面をズームさせ、回収するべき遺体の姿を確認しようとする。  だが、焼かれてまっ黒に焦げた遺体は、写真のそれよりも数を増し、遺体の上にさらに遺体が積み重なった状態であった。  その状況は、左手に見える水道橋までずらりと石垣のように続き、まだ新しい遺体からは、まだ煙が燻っている、そんな有様なのだ。 「ココ……変わろうか?」 [橋の上には見張りがいるし、お兄ちゃんのシ式じゃすぐ見つかるよ] 「……」  すぅ、と息を吸い込む音が、無線を通じて隆義の耳に届く。  ココは深呼吸をして気を落ち着かせると、シ式に積んだ備品から手袋を取り出し、装着を始めた。 [ワイヤーカッターちょうだい] 「解った」  シ式が手渡したのは、これもまたジャグリオンとシ式が持つのに丁度良い大きさの、巨大なハサミだ。  きゅーちゃんは西区の動きを読むのに集中し、今は支援ができない。 [あいちゃんの情報のおかげで、遺体の特徴は解るから──。ボクが回収したら、収容はお願いするよー] 「了解。ココ、気をつけて」 [任せて]  光学迷彩、起動。  青いジャグリオンの姿が透明化し、闇に溶けた。
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