18. 死者の慟哭

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「だいじょうぶ?」 「……あぁ。……使い続けて、慣れるしかないみたいだ」  隆義は、顔から引き剥がしたマスクを、腰の後ろの収納袋に戻そうとする。  が、座席の上に座っているので、腰を浮かせて、納めるべき袋を前方に回す。 「……置いとく場所も考えなきゃなぁ」  シ式の操縦席。錆が残る壁面を見回しながら、隆義は考え込む。  きゅーちゃんも考える仕草を見せるが── 「?」  何かに気付き、隆義の正面に回りこむ。 「たかよし、こころが "ごようじ" みたいよ」 「用事?」  作戦の事かな、と思いながら、隆義は乗降ハッチの把手に手をかけた。 「やっぱりここに居たんだね」  ぱたぱたと駆けてくる足音と共に、心の声が耳に飛び込む。  隆義はそのままハッチを真上に開き、スタンドを立てて固定する。  心の手にはスマートフォンが握られており── [隆義──] 「母さん?」  ──画面には、母・日向の姿が映っていた。 「映像通話モードになってるよ」  心はスマホを隆義に手渡し、その説明に隆義も納得する。  どうやら互いにスマホのカメラを介して姿が見えている様子だ。 「そっか……」 [隆義、大丈夫なん?] 「こっちは大丈夫。姉ちゃんも、こっちに来てるんだけど──」 [私の方もね──あんた、学院で聖叉って子と会ったじゃろ? その子のスマホを借りとるんよ]  母の後ろを見ると場所は病院の屋上で、あの魔女のような不思議な少女・八卦 聖叉(やつか みさ)の姿が確認できた。 [あんたと連絡が取れるって、わざわざ呉の方から海田に戻ってきてくれて──] 「そうだったんだ……」 [で、隆義あんた、どうしてそのロボットに乗っとるん?]  隆義の耳に、目の前からもう一人、足音が近づいてくる。  だが、長身のその男性は、身に着けている汚れた白衣から、義辰である事が解った。  とりあえず、隆義は画面の中に映る母に応える事に集中する事にするが── 「広島で起きてる騒ぎは──俺の学校の不良連中が関わってる。騒ぎを引き起こした新島の手下なんだ」 [だからってあんた、戦うつもり?] 「後ろからすまねぇ。ちょっと代わってくれねぇか?」  次の瞬間、スマホは隆義の手から、後からやってきた義辰の手に渡る。 「責任者だ。赤葉 義辰と言う。ええと、あんたは──」 [夕凪 日向──隆義の母です。娘の菊花もそちらに居るそうですね]
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