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「だいじょうぶ?」
「……あぁ。……使い続けて、慣れるしかないみたいだ」
隆義は、顔から引き剥がしたマスクを、腰の後ろの収納袋に戻そうとする。
が、座席の上に座っているので、腰を浮かせて、納めるべき袋を前方に回す。
「……置いとく場所も考えなきゃなぁ」
シ式の操縦席。錆が残る壁面を見回しながら、隆義は考え込む。
きゅーちゃんも考える仕草を見せるが──
「?」
何かに気付き、隆義の正面に回りこむ。
「たかよし、こころが "ごようじ" みたいよ」
「用事?」
作戦の事かな、と思いながら、隆義は乗降ハッチの把手に手をかけた。
「やっぱりここに居たんだね」
ぱたぱたと駆けてくる足音と共に、心の声が耳に飛び込む。
隆義はそのままハッチを真上に開き、スタンドを立てて固定する。
心の手にはスマートフォンが握られており──
[隆義──]
「母さん?」
──画面には、母・日向の姿が映っていた。
「映像通話モードになってるよ」
心はスマホを隆義に手渡し、その説明に隆義も納得する。
どうやら互いにスマホのカメラを介して姿が見えている様子だ。
「そっか……」
[隆義、大丈夫なん?]
「こっちは大丈夫。姉ちゃんも、こっちに来てるんだけど──」
[私の方もね──あんた、学院で聖叉って子と会ったじゃろ? その子のスマホを借りとるんよ]
母の後ろを見ると場所は病院の屋上で、あの魔女のような不思議な少女・八卦 聖叉(やつか みさ)の姿が確認できた。
[あんたと連絡が取れるって、わざわざ呉の方から海田に戻ってきてくれて──]
「そうだったんだ……」
[で、隆義あんた、どうしてそのロボットに乗っとるん?]
隆義の耳に、目の前からもう一人、足音が近づいてくる。
だが、長身のその男性は、身に着けている汚れた白衣から、義辰である事が解った。
とりあえず、隆義は画面の中に映る母に応える事に集中する事にするが──
「広島で起きてる騒ぎは──俺の学校の不良連中が関わってる。騒ぎを引き起こした新島の手下なんだ」
[だからってあんた、戦うつもり?]
「後ろからすまねぇ。ちょっと代わってくれねぇか?」
次の瞬間、スマホは隆義の手から、後からやってきた義辰の手に渡る。
「責任者だ。赤葉 義辰と言う。ええと、あんたは──」
[夕凪 日向──隆義の母です。娘の菊花もそちらに居るそうですね]
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