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「あぁ。……学校を出て行かされたと聞いています。垰 真澄(たお ますみ)という子と一緒に、こちらで保護しているんですが──」
[娘の事で、学校と話をした所だったんですよ。聞き入れてくれませんでしたが]
「それでは、しばらく安全な場所で保護する事になりますな……。後程、お子さんと会いますか? こちらの連絡先を伝えますので」
[はい、お願い致します。こちらも、まだ病院の仕事もありますし……]
「解りました」
義辰は、画面の中で日向がメモ用紙を取り出した事を確認すると──
「それではお伝えします。080の……」
──口頭で連絡先を伝え始めた。
一方、心はシ式の上によじ上り、隆義のすぐ隣、乗降ハッチの縁に腰を下ろす。
「しっかし、どうしてあの……聖叉って子が……」
隆義の口から出たのは、何故母が聖叉を通じて連絡をよこしてきたのか、その経緯を気にした。少なくとも聖叉と母には何の接点も無かったはず、と考えながら。
「聖叉ちゃんはボクの友達だし、連絡先を知ってたからだよ~。ここ最近はずっとメールでやり取りしてたから、直接連絡の上に、まさかの映像付き通話だったから驚いたよー」
「俺が気になったのは、母さんと関わりの無いあの子が、どうしてその連絡をよこしたのかって事」
「んー? そっち?」
不審に思う程でもないが、隆義はそれを気にした。
一方、話を聞いた心は考え込むが、しばらく考えた後──
「それじゃあ菊花さん絡みかも? 後で聖叉ちゃんに聞いてみようかな~?」
──頭上に?マークを浮かべたままそう言うと、心は首を傾げる。
「後は……今夜の遺体の回収の事なんだけど」
そして、今日の任務の本題。
隆義が心にその話を切り出すと、心も頭を切り替えた様子で──。
「英子ちゃんのお父さんの事だね」
「あぁ……。具体的にはどうする?」
「ボクのジャグリオンが光学迷彩で隠れながら、遺体を回収するよー。で、お兄ちゃんに渡すからその後はお兄ちゃんのお仕事っ」
心にとってはそこのあんちゃん、というニュアンスであったが「お兄ちゃん」と呼ばれて隆義は少し戸惑った。が、少し視線を逸らした後、気を取り直すように心の顔へ眼を向ける。
「……ボディバッグに遺体を収容して担架に乗せる。その後は撤収、だよな?」
「機体と自分用に使い捨ての手袋を用意した方がいいよー。臭いもあるけど、虫も湧いてるかもー」
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