18. 死者の慟哭

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 やがて、日は完全に沈む。時計は午後七時三十分──。  偵察は開始された。  教官の光学迷彩装備型ジャグリオンを先頭に、義辰──ドクターエイブルのシ式六番機改、さらにその後ろを、心の青いジャグリオンと、隆義のシ式七番機改が続いている。 [ドリルサージェントより各機へ。俺とドクターエイブル機・レッドチームは偵察を優先する。ココ機、リトルボーイ機のブルーチームは敵の動きに注意しつつ、パッケージの確保に集中してくれ] [ドクター了解。ブルーチーム、聞いたな?] [ココ了解] 「リトルボーイ了解」  四機は坂町のすぐ北、広島高速へと続く落とされた橋から海上を東寄りに進み、猿猴川を挟んで対岸にある向洋(むかいなだ)に回りこんで広島市街を偵察する様子だ。  この辺りは二日前に桜小路学院海田市校が襲撃された際、健斗の配下の武装不良グループに襲われた事もあり、一部の人々が逃げ出した様子で── 「周りの家が暗いな。灯りがついてない……」 「でも、まだひとがおるところもあるみたいよ」 「そうなのか……?」  ──灯りが点いている家は数える程しか見えない。  だが、それでも残っている人がいる事に、隆義は少し驚いていた。 「あぁ、今通り過ぎた所は灯りが点いてたな」 「うん……。すぐにはにげれんりゆうがあるみたい」 [もうすぐ向洋本町・国道二号線上のウェイポイント1に到達。その後、国道に沿って西へ進み、マツダ本社南ウェイポイント2にて、レッドチームとブルーチームは別行動]  先を行くレッドチームの二機が、唐突に高架を飛び降りる。  下には広島市へと繋がる国道二号線。心と隆義のブルーチームも、フェンスを飛び越えて飛び降りて行く。 「たかよし、きをつけて」 「解ってる」  ホバー出力全開。地面が迫るものの、脚部で圧縮された空気が見えないクッションを作り、落下速度が落ちる。そこを見計らい、出力を中程度に。  着地の衝撃がコクピットを軽く揺らしたが、動作に支障は無さそうである。 [ここからは無線の傍受を防ぐ為、短距離チャンネルに切り替える。以後、異状および俺の指示があるまで長距離チャンネルは封鎖] [ブルーチーム了解だよー]  教官の指示に、心が軽い返事を返すのを聞きながら、隆義は列の最後尾をついて行く。 「ウェイポイント2まで四百メートル、ヘマをするなよ。幸運を祈る」  そして、無線は沈黙した。
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