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視点はブルーチームに移る。
ココ機と隆義のシ式改はマツダ本社工場の敷地に入り、回収する遺体がある川沿いのポイントを目指しているのだが……。
[川の上に監視ボートがいるよ]
現在、ココ機は光学迷彩で周囲の景色に溶け込みながら、川沿いを偵察していた。
「サーチライトの光が強い……」
[前に出ないで。すぐに見つかっちゃう]
今、二人がいるのは県道十八号線の橋の下。
[例の大きな迫撃砲って、この対岸だよね?]
「あぁ」
そう、ここは巨大迫撃砲が鎮座する篠崎公園グラウンドの対岸なのだ。
橋の上は南の国道二号線と同じく、敵によりバスとトラックを並べたバリケードが築かれている事だろう。
しかし、ココの目を引いたのは、道の上だけでなく川の上にも、サーチライトと機関砲で武装したボートが隊列を組んで動いている事だ。
一旦様子を見終えたココは、音をたてないよう静かにジャグリオンを動かし、隆義がいる工場の建物の影へと戻ってくる。ココが無事に戻って来た事で、隆義はとりあえず安堵のため息をついた。
[マップを見ると、すぐ北にも橋があるね……]
「マツダの技術館に繋がってる。そのまま大洲か府中の方から回り込めば、奴らの支配エリアの外から写真の場所に行けるよ」
二人は多目的モニターに一枚の写真を映し出す。
この写真は──厳密には、あいちゃんがニュース映像で確認した場所のスクリーンショットなのだが、隆義は土地勘から場所に見当がついている。
「場所は俺が通ってた比治山小の近く、鉄工所とガス会社がある所の岸だ」
[この写真の場所って、鉄工所?]
「後ろの灰色で三角の平べったい建物がそう」
[ガストーチとか溶接機とかあるんでしょ? 敵が使ってるかもしれないね……]
ココに言われて、隆義は心の内で「あぁそうか」と思い、右手で額を押さえた。
溶接機があるという事は、敵が工場設備を接収して、車やロボットの改造や武器の製造を行っているかもしれないのだ。
もちろん、そこに行かなければ何とも言えないのだが……。
「とにかく……行くしかないか」
「きをひきしめんさい。おるみたいじゃけぇ……」
ぼやく隆義の後ろでは、きゅーちゃんが意識を集中して様子を見てくれたようだ。
どうやら、彼女によると敵は鉄工所の中に「居る」らしい。
[オッケー、行こっ]
ココは軽く返事をすると、また道を進み始める。
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