「言葉」

1/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

「言葉」

それは、突然の出来事だった。 いつも通りの、怠いけど楽しい毎日のほんのワンシーンだったと思う。 でも、それは浮きすぎていた。 「……東田さん…本当にいじめて、ごめん‥‥なさい‥‥ッ」 「‥‥‥なに、急に」 私を蹴ったり踏んだり傷つけてきた奴らのリーダーが、急に謝ってきた。 涙がボロボロと頬を伝っていて、凄い変わりようだ。 でも、許す気にはなれなかった。 「‥‥許せると、思って‥‥‥るの?」 恐かったけど、勇気を少し出してみた。胸が痛いほどドキドキ鳴って、苦しくて逃げ出したかったけど、踏ん張って。 声が震えているのは、恐いからだ。 「………ごめん‥ごめ、ごめんなさ‥‥、ゆ……許、して…下さ………いぃッ」 小刻みに震えていて、そんなに泣くほど反省してるのかって、許してあげても良いかなって、そう、思ったのにね。 私、気付いちゃった。 ──こいつ、笑ってる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!