柚子、虎になる

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柚子、虎になる

◇ ◇ ◇ 信じられないお誘いを受けたのは、それから一週間後の休日。 朝から部屋の大掃除をして、夕飯の準備をしようと思っている時にその電話はかかってきた。 『柚子。今なにしてんの?』 彬さんの声の背後では、屋外という感じではないけど、ガヤガヤと大勢の人の声が聞こえる。 「なにって……晩御飯を作ろうと思っていましたけど」 『そりゃよかった、今すぐ準備して出て来いよ』 「え、急にそんなこと言われても困ります」 『へえ……断っちゃうんだ。そっか、そっか、それは残念だ』 私が憮然と答えると、先ほどまで上機嫌だった彼が、突然含みのある言い方をして、声を落とした。 『……これから和也の部屋で飲むから、柚子も来るかなあって思ったんだけどな』 「かっ、和也さんの部屋っ!?」 驚くほど高い声が出て、自分でもびっくりした。
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