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もう泣かせない
◇ ◇ ◇
それからも彬さんは、ことあるごとに和也さんと会う機会を作ってくれた。
はじめて彼の家で飲んで以来。
二週間の間に居酒屋で一度、お店で二度。そして焼肉屋さんで一度。
今までにない頻度で会って、確実に距離が縮まった。
けれど最近は病院が忙しいのか、ここ一週間ほどは会う機会がなく。
また時を同じくして、私もケーキ作りに専念することになった。
実は彬さんが挑むはずだった一ヶ月後のコンテストに、私が出ることになったのだ。
「うーん、もう少しテンパリングを見直したほうがいいかもな」
営業終了後。
ケーキの上に乗せるチョコレートを口にした彬さんが、真剣な顔でうなずいた。
「分かりました。もう一度作ります」
「今日中にチョコは終わらせて、明日からは次の工程に行かなきゃ間に合わないぞ」
いつになく真剣な表情。
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