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「旦那様……っあの…少しお待ち下さい」
畳のある和風の蜂巣で、マツバは男の手に握られた淫具を怯えた眼差して見つめていた。
「ん?マツバは慣れているんじゃないのか?これをここに咥える事に」
これ、と言って握られた淫具の先をここ、と言ったマツバの後孔に宛がう。
マツバは顔を真っ赤に染めると男を見上げた。
「慣れてなんかいません…!」
潤んだ瞳で訴えるが、男の眼差しは既に酷薄なものに変わっていた。
「嘘を吐く子は嫌いだよ」
低い声で嗜められ、マツバの肌は一気に粟立つ。
この男、:西園寺忠幸(さいおんじただゆき)を前にすると、未だかつてないほど身体が熱くなり、異様に昂ってしまう事が、マツバの最近の悩みだった。
これまで散々色んな客に抱かれてきたマツバだったが、こんな風に気持ちを掻き乱してくる客に会ったのは初めてで、どうやって向き合えばいいのかわからない。
馬の鞍に埋め込まれた張り形で責められたあの日から、西園寺は度々訪れてはマツバを指命してくれていて、今ではマツバを指命する客の中で一番の上客だ。
それはとても有り難い事なのだが、マツバはこの男と過ごす間中、彼の一挙一動に反応してしまい翻弄されていた。
「慣れていないはずないだろう?こうするだけでこんなに物欲しそうにしているじゃないか」
淫具の先でひくつく割れ目をグニグニと刺激されてマツバは思わず背中を逸らした。
着物は着たまま脚を大きく開脚されて、性器は丸見えだ。
膝頭はくの字に折られ麻縄で縛られているため、どんなに恥ずかしくても股間を隠す事はできない。
両手も膝を縛りあげている麻縄に固定されてしまい、足を閉じる事さえもできなくされた。
「しかし、肥後ずいきを置いているなんてこの遊廓も大した趣味をしているな」
西園寺は淫具をもつ手を捻りながらフッと笑った。
肥後ずいきとはハスイモの干した茎で作られた江戸時代初期からある催春具の事だ。
複雑な模様を編んだ乳白色の淫靡な性具は、濡らすと滑った粘液サポニンという成分を分泌する。
その粘液には男性の精力を増幅させる作用があり、強烈な刺激を求める女性や不感症になった商売女に用いられていたらしい。
もちろん、男性しか存在しないここ淫花廓の蜂巣にも様々な形の肥後ずいきが常備されていて、攻め手にも受け手にも使用できると客の評判も良かった。
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