動き出す

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二人とも膝立ちになり、腰を重ねて、互いの欲望の塊を擦りつけ合った。服が汚れないよう、ワイシャツと下着のTシャツを少しだけたくし上げる。ネクタイは二人とも外さず、下端を肩に適当に引っかけた。 狭い二段ベッドで膝立ちの姿勢になったので、二人とも時折頭を上のベッドにぶつけた。その度笑ってしまうが、二人の腰はいやらしく揺れて止まらない。 二人とも、だらしない格好で欲望を貪り合っている。幹はどちらもタップリ濡れ、ローションでも垂らしたように卑猥に光っている。互いの目に映る恋人の姿が破廉恥すぎて、やがて笑う余裕もなくなった。 二人はしばらく、互いの幹に手では触れなかった。二人とも、手で触れたらすぐに達してしまうのがわかったのだ。ほどよい弾力の熱い肉、それが濡れて擦れ合うもどかしい快感は、抱き合った時と変わらない強さだった。 目が合うたびにキスをして、二人は腰を揺らし続けた。 「ヤバいよね、この状況。俺、これでも保守的な人間だと思ってたけど、これは……」 「刺激的?」 イタズラっぽい目を向けると、刺激的すぎ、と噛みつくようにキスされた。 「香って、汚いところがないよね。ここも……きれいな色。いつでも、いつまでも舐めてたくなる」 井上が擦れ合う二本の幹を見下ろす。欲情に濡れた目で。 「稜のは……すごく、やらしい色してる。……エロい……」     
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