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「へぇ……捜一にこんな二枚目の刑事がいたのか。最近の刑事は見た目がいいのが多いんだな、荒間署の子とか」
荒間署の子――堂本と香の関係を吉田は把握している。そして今は、井上との関係を探っているのだろう。香はどうやってこの場を立ち去るかで頭がいっぱいになった。
「そういえば、今は荒間署の捜査本部に詰めてるんだろ? 荒間署、イケメンパラダイスじゃないか。後はきれいな女性警官が何人かいれば楽しい職場になるな」
「警務部長……その発言はいかがなものかと。こういう時勢ですし」
ウザいほどこの状況を面白がっている吉田に、なけなしの抵抗を見せる。吉田に効くわけもないのだが。
「ああそっか、セクハラになっちゃうか。警務部なのに俺も認識が甘いな。勉強不足がバレちゃうな」
吉田が楽しそうに笑う。香は愛想笑いで顔がつりそうだ。
「警務部長、申し訳ありませんが、古賀刑事部長に呼び出しを受けていますので。失礼してよろしいでしょうか」
「ああ、悪い悪い。これから古賀くんに怒られるとこだったか。彼も心配性だからね、早く事件を解決してほしいんだろ。でも、あんまり彼がうるさかったら俺に言いなさい。俺も少しは穂積の役に立てると思うよ」
香は驚いて顔を上げた。吉田が仕事で自分を頼れ、などと言うのは初めてだったからだ。
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