見えない思い

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「……処理場敷地内で人骨が見つかったすぐ近くに、切断された遺体の一部が人骨と同じく地中に埋められた状態で発見されました。その中の左膝下と胴体が、先日荒間川で発見された左足首とDNA型が一致。つまり、処理場で見つかった切断遺体の一部は、すでに身元が判明している鈴木紗南のものと断定されました」 現在までに三係が把握している情報を、香を含む全捜査員に報告しているのは井上だ。香から少し離れた斜め前の席で起立し、手帳のメモを読み上げている。よく通る男らしい声は香の大好物だが、今はそれに聞き惚れている余裕はない。 「切断遺体は、鈴木紗南の他にもう一人分あったんですよね? それは荒間川で発見された右上腕と」 「DNA型が一致して、同じ女性だとわかってます。荒間川で発見された遺体はやはり処理場から流出したものでした。人骨や遺体が見つかった場所のすぐ近くが、土砂崩れでゴッソリ流れ出してます。その土砂に紛れて埋められた遺体や、もしかしたら人骨の一部も川に流出してるかもしれません」 井上は香の質問を先回りし、的確に答えた。香は頷きながら手元の資料に目を落とした。 「処理場内では今のところ、二人分の切断された遺体、それから人骨が大量に見つかっていますが、こちらは焼却処理されていて……まだどれだけの人数か、性別などは一切不明なんですね」     
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