誰かが隣にいてくれる

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 蓮からの電話は来ない、と思っていた。  学校中で誰より彼を捕まえては、説教をこぼす成瀬だ。  露骨にうるさい、と癇癪を起されたこともある。  嫌われているだろうな、と感じていた。  そんな私に電話などよこすはずはない、と思っていた。  だから、その日の夕刻、さっそく彼から電話があった時には驚いた。 「どうした、八神。何かあったか?」 「先生、一緒にすき焼き食べようよ」 「すき焼き!?」 「うん。家に来て」  それだけで、電話は切れてしまった。  迷ったが、これで自分が行かなければ、また夜の街へ出て行ってしまうかもしれない。  そんな思いが、成瀬を蓮の家へと向かわせた。
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