誰かが隣にいてくれる

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 一緒に寝ようという蓮を振りほどいてリビングのソファに寝た成瀬は、朝早くに起きだした。  キッチンにはパンも米もなかったが、ホットケーキの素があったので、それを焼いた。  ハムエッグに、コーヒー。ポタージュスープも用意した。  さすがの蓮も、この良い香りには降参したらしく、寝室から這い出てきた。 「洋介先生、まだいたの?」 「ずいぶんな挨拶だな。まずは顔を洗ってきなさい」 「おいしそう!」  余計な事を、と叱られるかもしれないと思ったが、やはり朝食の用意をしてよかった。 「先生、米倉さんより料理巧いよ」 「米倉さん?」 「お手伝いさん。もう辞めちゃったけど」  いまは、掃除や洗濯だけしに来てくれる人がいる、という。 「俺が寝てる時とか、いない時にしか来ないから、顔も名前もしらないけど」 「そうか……」  さらに深く、成瀬は蓮の孤独を感じ取っていた。
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