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災害大国ニッポンは、この摩訶不思議な病の克服に成功した。 方法は至ってシンプル。 あらゆる言葉の『か行』を濁すことで、未曾有の国難を乗りきったのである。 対処法を見つけたその日から、徹底した対策が導入された。 まずは会話。 基本的に言葉を濁り気味にして話す。 特に『か』だの『き』だの入り混じる単語は念入りに。 「先生、おはようございます!」 「はいおはよう! ギョウもいいテンギですね!」 それから書き言葉。 こちらも全てが濁音に差し替えられた。 文字を書く分には問題ないのだが、それをウッカリ読み上げてしまえば大惨事。 無慈悲なる死が待っている。 その為、あらゆる書物や標識からも『か行』が消されたのだ。 『本日13時より、ギグルミショーガイサイです!』 やら『最新ガデン製品がホゴる、その性能とガガグ一覧』といった、どうにも非効率で読みにくい文言が、街の至るところで散見されるようになった。 さらに、変化があったのは言葉だけに留まらなかった。 甚大な被害を受けた日本では、労働人口が危険水域まで激減していた。 よって、生存者により一人二役、いや三役を担うことが求められてしまう。 「さてと。仕事行ってグルガなぁ」     
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