1194人が本棚に入れています
本棚に追加
/244ページ
「話って、なんですか」
田川はビールの苦味を噛み締めながら、橋村の顔を見た。
当の橋村は、ビニールの中からガサゴソとつまみを取り出していた。
「うん、飲みながら話すよ。唐揚げな、これ」
田川の前に無造作にパックを置いて、割り箸を重ねる。橋村といえば、チーズやら肉巻きなんかを並べていた。
「色々買ってきたよ、奥さんの分まで買ってきたからさ。悪い」
「…いいんです」
悪気はないのが分かる。橋村の話はなんだろう────やはり浜田さんの事だろうか。
幸せにやっていると思っているのだか、もしかしたら心配性の橋村の事だ、変に勘ぐってはいないだろうか。
唐揚げを摘んで、またビールを飲み干す。簡単に一本のビールが空になった。
「まだあるぜ」
橋村がもうひとつのビニール袋の奥から、小さい瓶を取り出す。生酒だった。
「コップ、ある?」
田川はキッチンから二つ、透明な小さめのコップを持ってきた。珍しく、橋村も日本酒をやるつもりなのだろう。彼が日本酒を飲むのを見るのは独身以来だった。
「…俺も少し、酔うよ。酔わせてくれ」
最初のコメントを投稿しよう!