EPISODE10:30歳、真一

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「話って、なんですか」 田川はビールの苦味を噛み締めながら、橋村の顔を見た。 当の橋村は、ビニールの中からガサゴソとつまみを取り出していた。 「うん、飲みながら話すよ。唐揚げな、これ」 田川の前に無造作にパックを置いて、割り箸を重ねる。橋村といえば、チーズやら肉巻きなんかを並べていた。 「色々買ってきたよ、奥さんの分まで買ってきたからさ。悪い」 「…いいんです」 悪気はないのが分かる。橋村の話はなんだろう────やはり浜田さんの事だろうか。 幸せにやっていると思っているのだか、もしかしたら心配性の橋村の事だ、変に勘ぐってはいないだろうか。 唐揚げを摘んで、またビールを飲み干す。簡単に一本のビールが空になった。 「まだあるぜ」 橋村がもうひとつのビニール袋の奥から、小さい瓶を取り出す。生酒だった。 「コップ、ある?」 田川はキッチンから二つ、透明な小さめのコップを持ってきた。珍しく、橋村も日本酒をやるつもりなのだろう。彼が日本酒を飲むのを見るのは独身以来だった。 「…俺も少し、酔うよ。酔わせてくれ」
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