EPISODE5:18歳、凪

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病院に着くと、受け付けで患者名を言うことになっている。病棟を聞かれ、精神科です、と答えた。 すると、受け付けのナースが外来へどうぞ、と言ってくる。いつもの外来受診の時のように、精神科の窓口に声をかけ、待合室で待っていた。 「田川様、中へお入りください」 田川は緊張して中に入る。すると、自分より少しばかり歳をとっているだろうか。ちょこちょこと白髪が混じっている、黒髪の先生が座っていた。口髭を携えている。 「ああ、田川さんですね。奥様の事なんですが」 はぁ、と気のない返事をする。どうも肝が冷える。一体何を言われるのだろう、と田川は身構えた。 「君、あれ持ってきて」 なにやら、先生がナースに何かを持ってくるように頼んでいる。田川は緊張した。 ナースが持ってきたものは、小さな箱、であった。 「…これ、ね。奥様が作ったものなんです。箱庭療法、というのをご存知ですかな」 「いえ」 まじまじと見ると、中にはなにか、人形のようなものが入っている。砂の上に人形が立っているのだった。 「何か、気づくところはありますか」 「…人がいない。一輪の花、それにこれは…何だろう。卵?」 「木も動物もありません。あとは川だけ。しかし恐らく、この「花」は奥様であろうと」 「卵…川の向こうに置いてあります」 「そうですね」
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