12/10・交通事故と放課後の宇宙人

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 ☆  隣に立つ人間の、薄皮一枚隔てた内側は本当に自分と同じものなのだろうか。  そもそも人とは、ヒトとは何なのだろう。例えば、内臓の形や体液の組成が他のヒトと呼ばれる個体達と同じであったら、ルーツが根本から違っていてもそれはヒトと呼べるのだろうか。  私は自身がヒトであるということを自認している。古い時代から連綿と続く命の営みのなか、母の腹からオギャアと産まれた私は、海に落ちたり交通事故に遭ったり謎の飛来物により頭を打ち入院したりもしたが、どうにか十七年間生きてきた。  だがしかし、今回ばかりはもうダメかと思った。死んだと思った。けれども私の人生は紙一重で助かることが多く、今回も例に漏れず私は助かった。  居眠り運転なのか、それとも別の原因があるのかは分からない。私を庇って幼馴染が吹っ飛んだ。幼馴染を轢いた車は数メートルほど蛇行したのち事故現場から豪速で去っていった。  私達の他に道に人はいなくて、頭が真っ白になって、吹っ飛んだ幼馴染を見たくなくて、足が震えた。     
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