白いクレヨン

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 朝学校へ登校する際には分団で向かうが、帰りは同じ学年の近所の子供でグループを作らされて学年下校する。その日、私はいつものように一番近所のお友達と別れ、あとは真っ直ぐ進むだけの簡単な道をひとりきりで歩いていた。  視界の向こうに、頭から足まで真っ白な女の人が立っていた。歩きもせず、道の真ん中に立って正面を見据え、まるで私が来るのを待ち構えているかのようだった。  服や靴下、靴だけじゃなく、肌の色も、髪の毛すら真っ白。でも、おばあさんではなくて、若い女の人だ。  幽霊みたい……  そう思ったら急に怖くなって、走り出した。とは言っても、馬鹿正直で真面目だった私は通学路以外は歩いちゃいけないという決まりを守るため、彼女に向かって走り出したのだった。早くこの人を通り過ぎ、視界の後ろへと遠去けたかった。  ランドセルがガシャガシャ揺れて、私の心臓みたいに煩かった。背中から汗がじわじわと滲み出て、ランドセルの革に押し付けられ、いつもより牛の匂いが濃くなって気持ち悪くなった。  女の人を追い越す瞬間、目をギュッと閉じたら足に何かが当たる感触がした。 「っ!!」  バランスを崩した私は思いっきり膝から転んで手をついた。ランドセルの蓋をちゃんと閉めていなかったらしく、教科書やノート、筆箱なんかが頭から滝のように流れて道に散乱した。
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