博士と孫娘

2/4
前へ
/26ページ
次へ
「おじいちゃん、来たよぉ!」  石肌剥き出しの広大な地下工場に響く澄んだ声――  学校帰りなのかブレザーに身を包み、短くまとめた髪の少女――真奈美は壁沿いに据え付けられた金属の階段を元気よく駆け下りる。  少女の視界一杯に映る鋼鉄の巨人――機甲巨神ムラカミカドーの開かれた胸元のハッチから、一人の老人が顔を出し、孫の呼び掛けに応える。 「お、待っていたぞ、真奈美!」  かつての[神童]としての面影はもはや無く、年の割には力強い筋肉を晒し、反面、肌色を晒す頭頂以外の髪がすっかり白く染まった老人――神童寺博士は、掠れた濁声を張り上げた。 「待ってて、すぐに夕ご飯作るから……」  そう言いながら、巨大ロボの足元、様々な最先端の設備とは裏腹な、プレハブ小屋に作られた簡易キッチンに入った真奈美は中の状態を見て…… 「……呆れた。今週も、カップラーメンだけで生活していたの?」 「何を言うか、儂が7歳の時に発明した、栄養バランス満点のカップラーメンじゃぞ? おかげで今でも健康そのものじゃ!」 「それなら、私の作るご飯いらないよね」 「…………あ、それは作ってくれ」  プレハブの簡易キッチンにカラカラ、グツグツ、ジュウジュウと揚げ物や煮物、炒め物の音が心地よく響く中、テーブルに着いた博士は、子供のような目で調理を続ける孫の後ろ姿を見つめていた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加