嗚呼、侵略者よ……

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「先だっての偵察に於いて判明した、〈ムラカミカドー〉なる防衛兵器、どう足掻いても我らの手に負える敵ではありませぬ……」  ツノ付き兜を被る将軍の言葉に、この場の将校全員が同意し、続いて半分をメカ化したサイボーグ科学者も、 「遺憾ながら、何度も分析した結果、そのロボットに通用する兵器は我が軍には存在せず、また、技術の粋を結集したとしても開発することは不可能と判断いたしました……」  と、冷静かつ、口惜しそうに唇を噛み締めるように報告する。 「ムラカミカドーの存在を知り、〈ティンクル帝国〉や〈ホラー連邦〉と云った、他の名だたる侵略国家や犯罪帝国も、すべて地球侵略を諦めたと聞きました。 我が帝国がどうして敵いましょうか……」  そう言いながら、女神官がパイプオルガンの演奏を止め、目に浮かんだ涙を拭いた。  しんみりとした雰囲気に囚われた宮殿に、大帝の声が響く。 「私は、[滅び]が待っている戦いに身を投じるほど刹那的ではない……  ここは帝国安堵のため、侵略国家としての誇りを捨ててでも、戦いを避けることを選択しよう……」  帝国中に、涙とともに大帝による苦渋の決断を讃える臣下の声が響いた。
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