0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
遺影の訴え
今日通夜式を執り行うご遺体は、轢き逃げの交通事故で亡くなられた方だ。
大勢の弔問客が訪れてくれて、焼香はかなり時間を要したのだが、その様子を覗っている時、遺影の表情が変化していることに気づいた。
弔問客の一人の方へずっと視線が向いている。
それだけならば気のせいかもと思えたが、その客が焼香をする際、遺影が憤怒の表情に歪んだのだ。
その弔問客は車で式場に来ていたので、もしやと思い、番号と車種を控えて、式の後警察へ匿名の電話をかけた。
それからしばらくして、その時の弔問客が轢き逃げの犯人として捕まった。
自分を殺した相手がのうのうと通夜に参列していたら、写真の表情だって変わるよね。
あの形相に気づき、無念を晴らして上げることができて本当に良かった。
遺影の訴え…完
最初のコメントを投稿しよう!